偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「気を取り直して別の話でもしよう。けど、ハプニングのおかげでこうして君と話せる時間が伸びたのは、嬉しいけどな」

まっすぐに見つめられて心臓が鷲掴みされたみたいになる。水城さんの目は綺麗だった。彼に自然と引き込まれていくのがわかる。うっかり「イルブールでいつも飲んでますよね?」と言いそうになってその言葉をぐっと飲み込む。

「実を言うと、君とまた会えるのをすごく楽しみにしてたんだ。子どもみたいだって思うだろう?」

予想外のことを言われてドクンと胸が鳴った。

「わ、私も……」

私の咄嗟の返事に水城さんはにこりと笑う。けれど、彼は今自分の目の前にいるのは優香だと思っている。私も優香だと思い込ませるように振舞っているけれど、なんだか妙な気分になった。

余計なこと考えるのはやめよう……。動揺したら、また今みたいにヘマしちゃうかも。

気を取り直してしばらくすると、スタッフの人がデザートを持ってきてくれた。

「わぁ、季節感があって美味しそうですね」

それはさくらんぼゼリーとフランボワーズのムースにソルベが添えられていて、ふわっと甘くていい香りが鼻をくすぐる。見た目も可愛らしくて思わず笑みがこぼれた。さっそく口に入れると、とろける舌ざわりと甘酸っぱさが広がって手が止まらなくなる。

「そのデザートどう?」

ん? 私を、見てる?

水城さんは、テーブルに軽く頬杖をついて口元を綻ばせ、私にそう尋ねてきた。
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