偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
『優香か? お父さんだ。調子はどうだ?』
スマホから微かに聞こえる父の声。父は家を出た優香が心配なのか週に二、三度電話をしてくる。もちろん私には一回もかかってきたことはない。私の連絡先だって知らないはずだから当たり前なんだけど。
「うん。何も特に変わってないよ、元気」
優香と父が電話で会話をしている光景は、いつだってまるで仲睦まじい他人の親子を見ているようだった。
お父さんの声って、昔から変わってないな……。
男性にしては少し高めで、それが返って優しく聞こえる。
優香は私と一緒に住んでいると父に話していないようで、ひとり暮らしをしていることになっている。だから下手に話しかけたり物音を立てたりできない。
「え? デートの話? もう、お父さん水城さんに直接電話して聞いたの?」
水城さんの名前が優香の口から出てドキッとする。
どうやら優香と水城さんの進捗状況が気にかかって、父が彼に連絡を入れたようだ。水城さんと今、付き合っているのは優香ではなく、姉の私であることも知らずに聞こえてくる声音は機嫌がよさそうだ。
「お父さん、あまり私たちのこと詮索しないでよ? 水城さんだって逐一聞かれたら迷惑だよ。うん、うん、わかってるって。じゃあね、もう切るね」
電話を切ると、優香はハァと深くため息をついた。
「ごめん。それで、なんの話してたっけ?」
気を取り直して優香がニコッとするけれど、父のことを考えていたせいで私も何を今まで話していたかすっかり忘れてしまった。
「水城さん、愛美と……というか私とのこと本気なんだって、それを聞いてお父さんも喜んじゃって……」
「そう、なんだ」
ということは、やっぱり恋人の振りはまだ続けなきゃ、ってことだよね?
このまま振りをしたまま、万が一本当に結婚なんてことになったら……?
スマホから微かに聞こえる父の声。父は家を出た優香が心配なのか週に二、三度電話をしてくる。もちろん私には一回もかかってきたことはない。私の連絡先だって知らないはずだから当たり前なんだけど。
「うん。何も特に変わってないよ、元気」
優香と父が電話で会話をしている光景は、いつだってまるで仲睦まじい他人の親子を見ているようだった。
お父さんの声って、昔から変わってないな……。
男性にしては少し高めで、それが返って優しく聞こえる。
優香は私と一緒に住んでいると父に話していないようで、ひとり暮らしをしていることになっている。だから下手に話しかけたり物音を立てたりできない。
「え? デートの話? もう、お父さん水城さんに直接電話して聞いたの?」
水城さんの名前が優香の口から出てドキッとする。
どうやら優香と水城さんの進捗状況が気にかかって、父が彼に連絡を入れたようだ。水城さんと今、付き合っているのは優香ではなく、姉の私であることも知らずに聞こえてくる声音は機嫌がよさそうだ。
「お父さん、あまり私たちのこと詮索しないでよ? 水城さんだって逐一聞かれたら迷惑だよ。うん、うん、わかってるって。じゃあね、もう切るね」
電話を切ると、優香はハァと深くため息をついた。
「ごめん。それで、なんの話してたっけ?」
気を取り直して優香がニコッとするけれど、父のことを考えていたせいで私も何を今まで話していたかすっかり忘れてしまった。
「水城さん、愛美と……というか私とのこと本気なんだって、それを聞いてお父さんも喜んじゃって……」
「そう、なんだ」
ということは、やっぱり恋人の振りはまだ続けなきゃ、ってことだよね?
このまま振りをしたまま、万が一本当に結婚なんてことになったら……?