偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「ありがとうございます。あの曲を褒めて頂けるなんて光栄です。もしかして、あなたもピアノを?」
肩にかかる髪の毛をサッと後ろに回しただけで、彼女からいい匂いがする。梨花さんはいい家柄のお嬢様なのか、喋り口調にも品がある。
「あ、はい……私もレストランで演奏をしているんです。本業はOLなんですけど」
「え? 本当? どちらで弾かれてるの?」
他愛のない話だと思っていたけれど、予想外にも梨花さんは食いついてきた。
「新宿にあるイルブールっていう、スペインバルです。小さな店で、パリメラとは規模が違いますけど……」
すると、梨花さんが目を見開いて私をじっと見た。顔に何かついているんじゃないかと思うくらいに見入られる。
「そ、う……イルブールね」
店の名前を告げた途端、気のせいだと思ったけれどどことなく梨花さんの雰囲気が冷たいものに変わった。
「名前をお伺いしても?」
「有坂愛美です」
「有坂? 有坂って……もしかして有坂順子さんのお身内の方?」
まさか、彼女が母を知っているとは思わなかった。梨花さんの口から母の名前が出て、今度は私が目を見開いて驚く番だった。
「母を、知っているんですか?」
同業者だし、広い世界でも偶然にも同じコンサートホールなどで出くわす可能性だってある。世界は広いようで狭い。
「ええ、もちろん知ってるわよ。私、順子さんに憧れてピアニストになったようなものだもの……母、ってことはあなた娘さん?」
「そうです」
私が答えると、梨花さんはなぜ私もピアニストでないのか、と不思議そうな顔をした。
肩にかかる髪の毛をサッと後ろに回しただけで、彼女からいい匂いがする。梨花さんはいい家柄のお嬢様なのか、喋り口調にも品がある。
「あ、はい……私もレストランで演奏をしているんです。本業はOLなんですけど」
「え? 本当? どちらで弾かれてるの?」
他愛のない話だと思っていたけれど、予想外にも梨花さんは食いついてきた。
「新宿にあるイルブールっていう、スペインバルです。小さな店で、パリメラとは規模が違いますけど……」
すると、梨花さんが目を見開いて私をじっと見た。顔に何かついているんじゃないかと思うくらいに見入られる。
「そ、う……イルブールね」
店の名前を告げた途端、気のせいだと思ったけれどどことなく梨花さんの雰囲気が冷たいものに変わった。
「名前をお伺いしても?」
「有坂愛美です」
「有坂? 有坂って……もしかして有坂順子さんのお身内の方?」
まさか、彼女が母を知っているとは思わなかった。梨花さんの口から母の名前が出て、今度は私が目を見開いて驚く番だった。
「母を、知っているんですか?」
同業者だし、広い世界でも偶然にも同じコンサートホールなどで出くわす可能性だってある。世界は広いようで狭い。
「ええ、もちろん知ってるわよ。私、順子さんに憧れてピアニストになったようなものだもの……母、ってことはあなた娘さん?」
「そうです」
私が答えると、梨花さんはなぜ私もピアニストでないのか、と不思議そうな顔をした。