偽恋人からはじまる本気恋愛！～甘美な罠に溺れて～

数日後。

梨花さんのことは優香に話せないままだった。それに、なんて言えばいいのかさえわからない。

あの人は水城さんのなんなんだろう？とか、ほかにも恋人がいる？とか仕事中だというのによからぬ想像ばかりしてしまう。

こんなモヤモヤした気持ちで今夜はイルブールで演奏しなければならないと思うと気が重かった。

私は早めに昼休憩を済ませ、午前中にできなかった書類を作成するべく自分のデスクに戻ると、まだ休憩中の先輩たちが雑誌を囲んでキャッキャと話に花を咲かせていた。

「知ってる！　この人、いま噂の美人ピアニスト、木内梨花でしょ」

「えーっ！　相手の人、背が高くてめちゃくちゃイケメンそうじゃない？　顔がはっきりしてないからよくわからないけどさぁ」

え？　い、一体なんの話をしているの？

聞き覚えのある名前が先輩たちの口から飛び出て、思わずチラッと見やる。

今日発売された週刊誌を指さしながらぺちゃくちゃ喋っていたかと思えば、先輩たちはそれぞれ仕事に戻っていった。

相手の人、背が高くてめちゃくちゃイケメンそう？　ま、まさか……だよね？

いきなり先輩に「その週刊誌、見せてください！」なんて言う勇気もなく、私はインターネットで“木内梨花”と検索してみた。すると。