偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
先日の梨花さんの演奏を思い出すと、自分の下手さを改めて実感する。
二杯目のモスコミュールでひと口喉を潤すと、不意に隣の席に誰かが座る気配がした。
「こんばんは」
ふわっと甘いローズの香水の香りがして視線をあげると、そこにはにこりと笑いながらスツールに座る梨花さんがいた。
「り、梨花さん?」
どうしてここに……?
いるはずもない梨花さんを前にして、私はグラスを手に目を丸くする。
「イルブールで演奏してるって先日言ってたから……どうしてもあなたのピアノが聴きたくて。お店に問い合わせたら、今夜あなたが演奏するって教えてもらってね、来ちゃった」
「え……私の?」
世界中で活躍しているプロのピアニストにそんなことを言われて嬉しい反面どきりと緊張が走る。ミスしたところもバッチリ聴かれてしまったのかと思うと恥ずかしい。
「私もこの店を知ってるの。だから、愛美さんがここで演奏してるって聞いて驚いちゃった」
屈託もなく笑顔を絶やさない梨花さんに、私もつられて小さく笑みを返す。
「私、母と違ってピアノの腕はまだまだなんですけど、ずっと趣味で弾いてたのをオーナーの叔父に拾ってもらったんです」
「そうだったの。でも、趣味でも続けることが大事よ、演奏者は人に聴かせてなんぼなんだから。あなたの音も綺麗だったわよ、ちょっとズレてたところもあったけど、そんなのご愛敬よ」
プロの意識はきっとそうなのだろう。私みたいに趣味で弾いてる程度の生半可じゃ、きっと嫌な気分にさせてしまうかもしれない。けれど、梨花さんはそんな私に優しい言葉をかけてくれた。社交辞令だったとしても嬉しい。
二杯目のモスコミュールでひと口喉を潤すと、不意に隣の席に誰かが座る気配がした。
「こんばんは」
ふわっと甘いローズの香水の香りがして視線をあげると、そこにはにこりと笑いながらスツールに座る梨花さんがいた。
「り、梨花さん?」
どうしてここに……?
いるはずもない梨花さんを前にして、私はグラスを手に目を丸くする。
「イルブールで演奏してるって先日言ってたから……どうしてもあなたのピアノが聴きたくて。お店に問い合わせたら、今夜あなたが演奏するって教えてもらってね、来ちゃった」
「え……私の?」
世界中で活躍しているプロのピアニストにそんなことを言われて嬉しい反面どきりと緊張が走る。ミスしたところもバッチリ聴かれてしまったのかと思うと恥ずかしい。
「私もこの店を知ってるの。だから、愛美さんがここで演奏してるって聞いて驚いちゃった」
屈託もなく笑顔を絶やさない梨花さんに、私もつられて小さく笑みを返す。
「私、母と違ってピアノの腕はまだまだなんですけど、ずっと趣味で弾いてたのをオーナーの叔父に拾ってもらったんです」
「そうだったの。でも、趣味でも続けることが大事よ、演奏者は人に聴かせてなんぼなんだから。あなたの音も綺麗だったわよ、ちょっとズレてたところもあったけど、そんなのご愛敬よ」
プロの意識はきっとそうなのだろう。私みたいに趣味で弾いてる程度の生半可じゃ、きっと嫌な気分にさせてしまうかもしれない。けれど、梨花さんはそんな私に優しい言葉をかけてくれた。社交辞令だったとしても嬉しい。