偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
ついに謝恩会の日がやってきた。
一昨日も昨日も一日雨だったけれど、今日の天気はなんとか持ちそうだ。
「十八時にホテルビアント東京のロビーでお父さんと待ち合わせしてるからね」
謝恩会と水城さんのことですっかり気を取られていた私は、にこにこ顔の優香に言われて重大なことに気づかされた。
――最悪。
まさに、その言葉が今、私の全身を支配している。
父の主催するパーティーだと聞かされていたけれど、謝恩会に行くということは父に会うということ、それをすっかり失念していた。
「待ち合わせ、って……じゃあ、お父さんに会うってことだよね?」
そんな当たり前のことを言われた優香は、きょとんとしている。
「そうだよ。だって主催者だし」
そ、そうだよね……。
どうしよう! 水城さんのことでいっぱいだっていうのに、十年以上会っていないお父さんに今日会うなんて……。
無意識に耳朶をいじってまた優香に怒られる。
「大丈夫だよ。お父さん、たぶん愛美のこと気づかないよ。だって、ずっと会ってないんだもん」
父に優香じゃないとバレることも懸念要因だけど、私の個人的な父親に対する複雑な気持ちも入り混じっている。到底そんな胸の内、優香にはわからないだろうけど。
優香は週末いつものように彼氏とお泊りデートで、私の気も知らずに何もかも優香に扮した私を見て、「うん! 完璧に私!」とルンルンしている。
優香に水城さんから“『気持ちを聞かせて欲しい』って言われてるんだ。だから謝恩会で決着をつけてくるね”と何度言おうと思ったことか、けれど、これから彼氏とデートに行く彼女に余計な水を差したくなかった。
優香だけは気の置けない大事な家族。だから、私もつい甘やかしてしまうのだけれど、いつまでもこんなことじゃ姉失格だよね……と心の中で呟いて、私は謝恩会へ向かった。
一昨日も昨日も一日雨だったけれど、今日の天気はなんとか持ちそうだ。
「十八時にホテルビアント東京のロビーでお父さんと待ち合わせしてるからね」
謝恩会と水城さんのことですっかり気を取られていた私は、にこにこ顔の優香に言われて重大なことに気づかされた。
――最悪。
まさに、その言葉が今、私の全身を支配している。
父の主催するパーティーだと聞かされていたけれど、謝恩会に行くということは父に会うということ、それをすっかり失念していた。
「待ち合わせ、って……じゃあ、お父さんに会うってことだよね?」
そんな当たり前のことを言われた優香は、きょとんとしている。
「そうだよ。だって主催者だし」
そ、そうだよね……。
どうしよう! 水城さんのことでいっぱいだっていうのに、十年以上会っていないお父さんに今日会うなんて……。
無意識に耳朶をいじってまた優香に怒られる。
「大丈夫だよ。お父さん、たぶん愛美のこと気づかないよ。だって、ずっと会ってないんだもん」
父に優香じゃないとバレることも懸念要因だけど、私の個人的な父親に対する複雑な気持ちも入り混じっている。到底そんな胸の内、優香にはわからないだろうけど。
優香は週末いつものように彼氏とお泊りデートで、私の気も知らずに何もかも優香に扮した私を見て、「うん! 完璧に私!」とルンルンしている。
優香に水城さんから“『気持ちを聞かせて欲しい』って言われてるんだ。だから謝恩会で決着をつけてくるね”と何度言おうと思ったことか、けれど、これから彼氏とデートに行く彼女に余計な水を差したくなかった。
優香だけは気の置けない大事な家族。だから、私もつい甘やかしてしまうのだけれど、いつまでもこんなことじゃ姉失格だよね……と心の中で呟いて、私は謝恩会へ向かった。