偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「水城さん、このローストビーフ美味しいですね!」
今日は朝、軽くおにぎりで済ませて昼を抜いていたせいか、美味しいものを口にした途端一気に食欲が爆発した。
「これ、ローストビーフに見えるだろう? でも、実は合鴨肉のローストなんだ」
「え、そうだったんですか」
「ああ、少し脂っこいけど甘味があって、俺はどちらかと言うと鴨肉のほうが好みかな」
ローストビーフにしては歯ごたえがあると思ったけど……違いもわからないなんて恥ずかしい。
以前、水城さんと初デートしたレストランのときも思ったけれど、食について語る彼の目はキラキラしている。
そりゃ、料理人だったし、それが高じて自分の店、というか会社まで持っちゃうくらいなんだもんの……。
料理音痴で、しかもこんな高級食材を使った料理なんて縁のない私に、水城さんはあれこれと説明してくれた。料理なんて今まで興味もなかったのに、水城さんと話していると、不思議と今度何か自分で作ってみようという気になる。
「私、実は料理が苦手で……あんまり自炊もしないんです。でも、水城さんに色々教えてもらっていい刺激になりました」
「じゃあ、今度俺の家で料理しないか? 教えるよ」
「え……」
にこりと笑う水城さんを見て、心臓が跳ねる。
水城さんと、一緒に料理かぁ……。
頭の中で水城さんから手ほどきされている自分の姿を勝手に妄想してしまう。けれど……。
私には“今度”という文字はない。
そのことを思い出すと急に高ぶる気持ちが冷めていった。
私はこの謝恩会で、水城さんに引導を渡さなければならない。その機会をいつにしようか考えなくてはいけないというのに、浮かれてる場合じゃない。
「あ、あの……」
――少しふたりで話しませんか?
そう言かけたその時だった。
今日は朝、軽くおにぎりで済ませて昼を抜いていたせいか、美味しいものを口にした途端一気に食欲が爆発した。
「これ、ローストビーフに見えるだろう? でも、実は合鴨肉のローストなんだ」
「え、そうだったんですか」
「ああ、少し脂っこいけど甘味があって、俺はどちらかと言うと鴨肉のほうが好みかな」
ローストビーフにしては歯ごたえがあると思ったけど……違いもわからないなんて恥ずかしい。
以前、水城さんと初デートしたレストランのときも思ったけれど、食について語る彼の目はキラキラしている。
そりゃ、料理人だったし、それが高じて自分の店、というか会社まで持っちゃうくらいなんだもんの……。
料理音痴で、しかもこんな高級食材を使った料理なんて縁のない私に、水城さんはあれこれと説明してくれた。料理なんて今まで興味もなかったのに、水城さんと話していると、不思議と今度何か自分で作ってみようという気になる。
「私、実は料理が苦手で……あんまり自炊もしないんです。でも、水城さんに色々教えてもらっていい刺激になりました」
「じゃあ、今度俺の家で料理しないか? 教えるよ」
「え……」
にこりと笑う水城さんを見て、心臓が跳ねる。
水城さんと、一緒に料理かぁ……。
頭の中で水城さんから手ほどきされている自分の姿を勝手に妄想してしまう。けれど……。
私には“今度”という文字はない。
そのことを思い出すと急に高ぶる気持ちが冷めていった。
私はこの謝恩会で、水城さんに引導を渡さなければならない。その機会をいつにしようか考えなくてはいけないというのに、浮かれてる場合じゃない。
「あ、あの……」
――少しふたりで話しませんか?
そう言かけたその時だった。