偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「大丈夫か?」
会場ホールを出たところにあるロビーへ行くと、一気に新鮮な空気が肺に入って来た。あまりの人の多さに会場の空気は薄く、そして騒々しかった。こういった場所に免疫がなくてロビーに出ると、どっと疲れが身体にのしかかった。
「すみません、大丈夫です」
二十階のロビーから見えるパノラマの景色はどんより湿気を含んでいて、よく見ると大粒の雨が降っていた。
「このあたりに座ろうか。人もいないし、ゆっくりできるだろう」
水城さんの気遣いに申し訳なさが募る。私はその言葉に甘えて窓際のソファに腰を下ろすと、彼は私の向かいに座った。
「水城さん、村野社長のことご存知だったんですね」
水城さんも別に助け船のつもりじゃなかったにしろ、名前が出てこないままだったら動揺してボロが出てしまってしたかもしれない。
「ああ、ムラノ食品はうちと取引がある会社で、たまにプレゼンに呼ばれて行くんだ。でも、今日社長に会うとは思ってなかったけどな。あぁ、なにか飲み物でも持ってこようか?」
腰を浮かせて立とうとする水城さんに、私はふるふると首を振った。
「いいえ、大丈夫です。少しここで休憩すれば平気ですから……すみません。それにしてもすごい雨ですね」
窓の外を見ながら、傘を持ってこなかったことに気づく。
ああ、どうやって帰ろう。タクシー? 今日は雨の予報じゃなかったんだけどな。
会場ホールを出たところにあるロビーへ行くと、一気に新鮮な空気が肺に入って来た。あまりの人の多さに会場の空気は薄く、そして騒々しかった。こういった場所に免疫がなくてロビーに出ると、どっと疲れが身体にのしかかった。
「すみません、大丈夫です」
二十階のロビーから見えるパノラマの景色はどんより湿気を含んでいて、よく見ると大粒の雨が降っていた。
「このあたりに座ろうか。人もいないし、ゆっくりできるだろう」
水城さんの気遣いに申し訳なさが募る。私はその言葉に甘えて窓際のソファに腰を下ろすと、彼は私の向かいに座った。
「水城さん、村野社長のことご存知だったんですね」
水城さんも別に助け船のつもりじゃなかったにしろ、名前が出てこないままだったら動揺してボロが出てしまってしたかもしれない。
「ああ、ムラノ食品はうちと取引がある会社で、たまにプレゼンに呼ばれて行くんだ。でも、今日社長に会うとは思ってなかったけどな。あぁ、なにか飲み物でも持ってこようか?」
腰を浮かせて立とうとする水城さんに、私はふるふると首を振った。
「いいえ、大丈夫です。少しここで休憩すれば平気ですから……すみません。それにしてもすごい雨ですね」
窓の外を見ながら、傘を持ってこなかったことに気づく。
ああ、どうやって帰ろう。タクシー? 今日は雨の予報じゃなかったんだけどな。