偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「有坂社長はお元気? 愛美さんがここにいるってことはお父様、なのよね? 私もお世話になっているから後で挨拶に行こうと思って」
「そ、そうですか……」
ああっ! もう、なにもかも終わりだよ! まさか、こんなところでバラされちゃうなんて! しかも梨花さんに!
私が有坂順子の娘であることは、離婚しているとはいえ、父がアルコン広告社の社長であることも自ずとわかる。
神様の悪戯という偶然を呪い、居たたまれなくなった私は勢いよくソファから立ち上がった。
「すみません! 失礼します!」
この謝恩会で水城さんに“恋人にはなれません!”と週刊誌を口実にキッパリそう言うつもりだった。けれど、優香と入れ替わって騙しているのは私のほう。そのことだけを水城さんに言わずに、彼だけを悪者にしようとした罰だ。
「あっ、待ってくれ!」
水城さんの呼び止める声を無視して、私は逃げるようにその場から走り去った。そして、ちょうど、開いていた下に向かうエレベーターに転がり込む。
はぁ……もう、最低! 最低だよ、私。
箱の中には数人の人が乗り合わせていた。壁に背を凭れてずるずるとしゃがみこみたい衝動を押さえ、何度も唾を呑みこんだ。
とにかく早くここから離れたい……早く! 早く!
「そ、そうですか……」
ああっ! もう、なにもかも終わりだよ! まさか、こんなところでバラされちゃうなんて! しかも梨花さんに!
私が有坂順子の娘であることは、離婚しているとはいえ、父がアルコン広告社の社長であることも自ずとわかる。
神様の悪戯という偶然を呪い、居たたまれなくなった私は勢いよくソファから立ち上がった。
「すみません! 失礼します!」
この謝恩会で水城さんに“恋人にはなれません!”と週刊誌を口実にキッパリそう言うつもりだった。けれど、優香と入れ替わって騙しているのは私のほう。そのことだけを水城さんに言わずに、彼だけを悪者にしようとした罰だ。
「あっ、待ってくれ!」
水城さんの呼び止める声を無視して、私は逃げるようにその場から走り去った。そして、ちょうど、開いていた下に向かうエレベーターに転がり込む。
はぁ……もう、最低! 最低だよ、私。
箱の中には数人の人が乗り合わせていた。壁に背を凭れてずるずるとしゃがみこみたい衝動を押さえ、何度も唾を呑みこんだ。
とにかく早くここから離れたい……早く! 早く!