君のとなりで恋をします。─上─
いつもの桜河からは想像できないほどの真剣な表情。
じっと目を瞑って大きく息を吐くのが、試合前の桜河のルーティン。
だけど…
いつもより少しだけ落ち着きがないのは…気のせいかな?
「声かけなくていいの?」
隣に座る柊吾がそう尋ねる。
「うん。
今、集中してるっぽいし…。」
「そっか。」
それだけ答えて、私は再び桜河に視線を向ける。
がんばれ、桜河。
飛び込み台に立つたくましい背中を見つめて彼の勝利を祈った。