君のとなりで恋をします。─上─
「香純…!」
何かを言おうとする柊吾と目を合わせないように、スコアボードを運び出す。
「ごめん、市原くん。
そこのビブス運んでもらっていい?」
「あぁ、わかりました。」
何事も良かったかのようその場を離れようとする私の腕を、柊吾は力強く引いた。
「…香純、ちょっと待って。」
私が大好きなこの大きな手も、低くて優しい声も…
今の私には、不快でしかなかった。
「ごめん、柊吾。…今、忙しいの。
もう練習始まるよ?柊吾も戻りなよ。」
ここは体育館倉庫。
市原くんや桃奈さんもいる。
それに、部員たちは私と柊吾の関係を知らないし…会話を聞かれたら困る。
できるだけ冷静に。
ことを荒立てないように……