君のとなりで恋をします。─上─
柊吾はしばらく答えづらそうに黙る。
そして一口コーヒーを口に含み、何かを決意したように話し始めた。
「…俺にも、わからない。」
「わからないって…」
桃奈さんのことを抱いたかどうかなんて、自分の記憶でしょ?
わからないってどういうこと…?
「桃奈の家、家庭環境が少し複雑で…
あいつ、思い詰めて1回自殺未遂をした事があったんだ。
それから、俺も頻繁に桃奈の家に様子を見に行くようになって…」
私は、ただ黙って柊吾の話を聞く。
「…中3の夏休み、一度だけ桃奈に頼まれて家に泊まったことがあったんだけど…
その日もいつも通り桃奈の親は留守で…」
…覚えてる。
中3の夏休み、親戚の家に泊まり行くと言う柊吾を駅で見送った。
その数日後になっても、この町に帰ってきたはずの柊吾とは連絡も取れなくて…