君のとなりで恋をします。─上─
「もしもし。…桜河?」
『当たり前だろ。
…お前が電話掛けてきたんだから。』
電話口から聞こえてくる桜河の声はいつもより低くて、いつもよりゆっくりで…
だけど、いつものように優しかった。
「桜河…ごめんね。
あんたの気持ち考えずに、勝手なことばかり言って…」
『いいよ、もう気にしてない。』
きっと今、無理して笑ってる。
私が大嫌いなあの笑顔。
そう思うとなんだか切なくなって…
やっぱり、今すぐ伝えないと。
私の正直な気持ちを…
私は歩みを止めて大きく深呼吸をした。
そして声を発そうとしたその時、私より先に電話の向こうの桜河が話し始める。