ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
* * *
年が明けてしばらくはお店も休みになるので、新年最初の朝は存分に寝坊をした。昨日は遅くまで出歩いたから、夢も見ないほどぐっすり眠れたみたいだ。
ふわあ、とあくびをしながら朝食の用意をする。お雑煮とお節料理が食べたい気分だけど、簡単なもので我慢しよう。
キッチンからテーブルに朝食を運ぶとき、扉に何か挟まっていることに気付いた。
「なんだろう……カード?」
引き抜いてみると、お店のカードだった。『扉を開けろ』と書いてある。
不審に思いながらも扉を開けると、廊下の壁側にリボンのかかった箱が置いてあるのが目についた。
「これって……」
開けてみると、昨日私が買うことをあきらめた毛糸のショールが入っていた。
「嘘、どうして」
ショールを持ち上げる手が震えてしまう。
箱の中にもカードが入っており、開くと三通りの筆跡が並んでいた。
【新年の贈り物だよ。びっくりした? セピア】
【アッシュが選んだにしては女心をわかっているわね。クラレット】
【やはり君に似合うと思ったからこれにした。今年もよろしく頼む。アッシュ】
この国では、新年の贈り物をするのが習慣だ。
――そう、恋人や“家族”に。
カードに書かれた字が、水滴を落としたようにじわりと滲む。
「もう、こんなの、卑怯だよ、みんな……」
あふれてきた涙をぬぐいながら、ショールを肩にかけてみる。まさか、あのあとひとりで戻って買ってくれたのだろうか。あのアッシュが、人混みの中を。
お花の並んだショールは、あったかくて、やわらかくて……。彼の手のぬくもりを思い出してまた、泣けてきた。
休みが終わったら、私からも三人に贈り物を渡そう。みんなはこの世界での家族だよって感謝をこめて。
照れないで渡せるかな。どんな顔で受け取ってくれるだろう。
あれこれ考えていると、胸がぽかぽかとあたたかくなるのを感じた。
年が明けてしばらくはお店も休みになるので、新年最初の朝は存分に寝坊をした。昨日は遅くまで出歩いたから、夢も見ないほどぐっすり眠れたみたいだ。
ふわあ、とあくびをしながら朝食の用意をする。お雑煮とお節料理が食べたい気分だけど、簡単なもので我慢しよう。
キッチンからテーブルに朝食を運ぶとき、扉に何か挟まっていることに気付いた。
「なんだろう……カード?」
引き抜いてみると、お店のカードだった。『扉を開けろ』と書いてある。
不審に思いながらも扉を開けると、廊下の壁側にリボンのかかった箱が置いてあるのが目についた。
「これって……」
開けてみると、昨日私が買うことをあきらめた毛糸のショールが入っていた。
「嘘、どうして」
ショールを持ち上げる手が震えてしまう。
箱の中にもカードが入っており、開くと三通りの筆跡が並んでいた。
【新年の贈り物だよ。びっくりした? セピア】
【アッシュが選んだにしては女心をわかっているわね。クラレット】
【やはり君に似合うと思ったからこれにした。今年もよろしく頼む。アッシュ】
この国では、新年の贈り物をするのが習慣だ。
――そう、恋人や“家族”に。
カードに書かれた字が、水滴を落としたようにじわりと滲む。
「もう、こんなの、卑怯だよ、みんな……」
あふれてきた涙をぬぐいながら、ショールを肩にかけてみる。まさか、あのあとひとりで戻って買ってくれたのだろうか。あのアッシュが、人混みの中を。
お花の並んだショールは、あったかくて、やわらかくて……。彼の手のぬくもりを思い出してまた、泣けてきた。
休みが終わったら、私からも三人に贈り物を渡そう。みんなはこの世界での家族だよって感謝をこめて。
照れないで渡せるかな。どんな顔で受け取ってくれるだろう。
あれこれ考えていると、胸がぽかぽかとあたたかくなるのを感じた。