ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「いらっしゃいませ。はじめてのお客さまですよね? お名前を伺ってもよろしいですか?」
さすがと言うべきか、クラレットの対応はいつもと変わらない。その華やかな外見に圧倒されたように、女の子が身を引く。
「あ、えっと、ローズっていいます。それであの、できればそっちの人に接客してもらいたいんだけど」
「えっ」
急なご指名に、少し離れて見守っていた私は面食らってしまった。ローズは横目でちらちらと私を見てくる。
あのときの敵意まじりの眼差しではなく、助けを懇願している子どもみたいだった。
「えーと、私でいいの?」
「そう言ってるじゃん」
苛々した口調で告げるローズを見て、クラレットは気を回してくれたようだ。
「では、お客さまの接客はケイトに引き継いでもらいますね。私はお茶を淹れて参りますので、ごゆっくり」
と言ってキッチンに下がろうとする。
「えっ、ちょっと待って」
ふたりきりにされても困るから引き留めたのだが、「いいからいいから」という顔で目配せされてしまう。オネエの気遣いがこんなときばかりはうらめしい。
クラレットが行ってしまうと、やっとほっとしたようにローズは長い息を吐いた。
「貴族の店ってみんなこんな感じなの? すごく落ち着かないんだけど」
ごく普通の、友達に対するようなトーンで話しかけられたので困惑する。この子のことはもう恨んでないと言っても、どういう態度でいれば正解なのかがわからない。
「えっと、いらっしゃい。今日はドレスを作りに来たの?」
結局無難に、「知り合いがお店に来たときのショップ店員」のモードで攻めてみた。
さすがと言うべきか、クラレットの対応はいつもと変わらない。その華やかな外見に圧倒されたように、女の子が身を引く。
「あ、えっと、ローズっていいます。それであの、できればそっちの人に接客してもらいたいんだけど」
「えっ」
急なご指名に、少し離れて見守っていた私は面食らってしまった。ローズは横目でちらちらと私を見てくる。
あのときの敵意まじりの眼差しではなく、助けを懇願している子どもみたいだった。
「えーと、私でいいの?」
「そう言ってるじゃん」
苛々した口調で告げるローズを見て、クラレットは気を回してくれたようだ。
「では、お客さまの接客はケイトに引き継いでもらいますね。私はお茶を淹れて参りますので、ごゆっくり」
と言ってキッチンに下がろうとする。
「えっ、ちょっと待って」
ふたりきりにされても困るから引き留めたのだが、「いいからいいから」という顔で目配せされてしまう。オネエの気遣いがこんなときばかりはうらめしい。
クラレットが行ってしまうと、やっとほっとしたようにローズは長い息を吐いた。
「貴族の店ってみんなこんな感じなの? すごく落ち着かないんだけど」
ごく普通の、友達に対するようなトーンで話しかけられたので困惑する。この子のことはもう恨んでないと言っても、どういう態度でいれば正解なのかがわからない。
「えっと、いらっしゃい。今日はドレスを作りに来たの?」
結局無難に、「知り合いがお店に来たときのショップ店員」のモードで攻めてみた。