ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「いや、あのさ。その前に謝りたいんだ、あたし。あんたに」

 意外な展開とストレートな言葉に、面食らってしまった。不機嫌そうな表情と声は、照れ隠しなのだと今気付いた。

 なんだやっぱり、悪い子ではないじゃないか。

「なかなか謝りに来れなくて、何回かお店の前まで来たりしたんだけど、いつもそのまま帰っちゃってて……」

 ここ最近、お店のまわりで感じた視線はこの子だったのか。

「あのときは、いろいろごめん。あとから風邪を引いたってセピアくんに訊いて、反省してたんだ」

 ひと息でそう言って、緊張したように私を見る。

「もういいよ。終わったことだし、気にしてないから」

「本気でそう言ってる? 気にしてないなんて、心広すぎない?」

 喜んでくれると思いきや、いぶかしげな顔で見つめられた。

 心が広くなったというか、いきなり異世界に飛ばされたことを考えたら、あれくらいは大したことじゃない。と、思う。

「ごめん、そんなあっさり許してくれると思ってなかったから、面食らっちゃった」

「ううん。私でもそう思うだろうし」

「あんた、異世界人だったよね。異世界の人ってみんなそうなの?」

「そういうわけじゃなくて、こっちに来てから信じられないようなことばっかり起こるから、受け入れていかないと生きていけなくなっただけ」

「苦労してるんだね……」

 ローズは、眉を下げて憐みのこもった眼差しを送ってきた。意外と情にもろいタイプなのかもしれない。
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