ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
その瞬間、むせ返るような甘い芳香が、濃い霧のようになって私を取り巻いた。
信じられないことだけど、薄い桃色の空気が見える。三兄弟のそばにいるときにかいだことのある、あの甘さとは比べものにならないくらいの、気を失いそうになるくらいの甘い匂い――。
頭がくらくらして、目の前がちかちかして、ソファの前に膝をついてしまった。
「……ケイト」
かすれたような声を出して、アッシュが私の名前を呼ぶ。息を吸っても吸っても、桃色の霧しか肺に入ってこない。酸素が足りなくて、くるしい。
一体これは、どういう事態なのだろう。逃げたほうがいいのか、アッシュを起こしたほうがいいのか。考えたいのに、立ち上がりたいのに、頭も身体も動かない。
「アッシュ、さん……は、息、できてますか?」
もうろうとしながら返事をすると、がしっと腕をつかまれた。
「――え?」
抵抗する間もなく、引き寄せられ、後頭部に手を添えられる。
これは、なに? なにが起きてるの?
そう思った瞬間には、私の唇はアッシュの唇に、スタンプのように押されていた。
「――!?」
顔を離そうと思ったのに、がっちり頭を固定されていて動けない。
私が抵抗するのを咎めるように、アッシュの舌が口内に侵入してきた。
吸ったり、絡めたり。少し音を立てたり、軽く噛むようにしたり。
ありとあらゆるキスを試すように、アッシュの唇が、舌が動く。
信じられないことだけど、薄い桃色の空気が見える。三兄弟のそばにいるときにかいだことのある、あの甘さとは比べものにならないくらいの、気を失いそうになるくらいの甘い匂い――。
頭がくらくらして、目の前がちかちかして、ソファの前に膝をついてしまった。
「……ケイト」
かすれたような声を出して、アッシュが私の名前を呼ぶ。息を吸っても吸っても、桃色の霧しか肺に入ってこない。酸素が足りなくて、くるしい。
一体これは、どういう事態なのだろう。逃げたほうがいいのか、アッシュを起こしたほうがいいのか。考えたいのに、立ち上がりたいのに、頭も身体も動かない。
「アッシュ、さん……は、息、できてますか?」
もうろうとしながら返事をすると、がしっと腕をつかまれた。
「――え?」
抵抗する間もなく、引き寄せられ、後頭部に手を添えられる。
これは、なに? なにが起きてるの?
そう思った瞬間には、私の唇はアッシュの唇に、スタンプのように押されていた。
「――!?」
顔を離そうと思ったのに、がっちり頭を固定されていて動けない。
私が抵抗するのを咎めるように、アッシュの舌が口内に侵入してきた。
吸ったり、絡めたり。少し音を立てたり、軽く噛むようにしたり。
ありとあらゆるキスを試すように、アッシュの唇が、舌が動く。