ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「最後は俺か」
アッシュが組んだ脚を戻して、紅茶のカップを置いた。
「アッシュ・スティルハートだ。……名前は知っているな。歳は二十五だ。クラレットが決めた布地やお客さまの要望からデザインを書き起こし、縫製する。いつも裏で作業しているから、店にはほとんど出ることはない」
「そうなんですか」
アッシュがちくちく縫い物をしている姿はあまり想像できない。
「この店は先先代から王室に献上している伝統ある店だ。来る客も、貴族の令嬢か中流階級の金持ちばかりだ。晩餐会用のドレスも作れば、普段着用のアフタヌーンドレスも作る。要望があればナイトドレスだって作るし、上流階級からの信頼は厚い」
「爵位を献上されたということは、役人さんに聞きました」
「ああ。君にはそれに恥じない働きをしてもらわなければならない」
「……頑張ります」
もとの世界でもセレブとの付き合いなんてなかったけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
「不安そうだな」
「すみません」
「まずは見た目から変えてやる。その服じゃ店に立たせられないからな。クラレット、採寸を」
「はぁい。ケイト、こっちにいらっしゃい」
クラレットに手を引かれて、奥の小部屋に連れていかれた。ここが採寸室になっていたようだ。試着室のようなものだろうけれど、姿見のほかにソファやテーブルもあるし、花も生けてある。ちいさいワンルームだったらすっぽりおさまってしまいそうだ。
「え、あの、採寸って何のために」
「あなたのドレスを作るために決まってるじゃない」
「作ってくれるの? アッシュさんが?」
「うちの店で働くんだからうちのドレスを着るのは当たり前。これも仕事のうちよ。最初だし特別にタダで作ってあげるみたいだから、アッシュに感謝しなさいよ」
あの繊細なドレスが着られると思うと、胸が高鳴るのを感じた。本当はものすごく高価なものなのだろう。社販ではなく頂けるなんて、夢のようなホワイト企業だ。
「じゃ、早く下着姿になってちょうだい」
「え」
「採寸するんだから当たり前でしょう」
アッシュが組んだ脚を戻して、紅茶のカップを置いた。
「アッシュ・スティルハートだ。……名前は知っているな。歳は二十五だ。クラレットが決めた布地やお客さまの要望からデザインを書き起こし、縫製する。いつも裏で作業しているから、店にはほとんど出ることはない」
「そうなんですか」
アッシュがちくちく縫い物をしている姿はあまり想像できない。
「この店は先先代から王室に献上している伝統ある店だ。来る客も、貴族の令嬢か中流階級の金持ちばかりだ。晩餐会用のドレスも作れば、普段着用のアフタヌーンドレスも作る。要望があればナイトドレスだって作るし、上流階級からの信頼は厚い」
「爵位を献上されたということは、役人さんに聞きました」
「ああ。君にはそれに恥じない働きをしてもらわなければならない」
「……頑張ります」
もとの世界でもセレブとの付き合いなんてなかったけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
「不安そうだな」
「すみません」
「まずは見た目から変えてやる。その服じゃ店に立たせられないからな。クラレット、採寸を」
「はぁい。ケイト、こっちにいらっしゃい」
クラレットに手を引かれて、奥の小部屋に連れていかれた。ここが採寸室になっていたようだ。試着室のようなものだろうけれど、姿見のほかにソファやテーブルもあるし、花も生けてある。ちいさいワンルームだったらすっぽりおさまってしまいそうだ。
「え、あの、採寸って何のために」
「あなたのドレスを作るために決まってるじゃない」
「作ってくれるの? アッシュさんが?」
「うちの店で働くんだからうちのドレスを着るのは当たり前。これも仕事のうちよ。最初だし特別にタダで作ってあげるみたいだから、アッシュに感謝しなさいよ」
あの繊細なドレスが着られると思うと、胸が高鳴るのを感じた。本当はものすごく高価なものなのだろう。社販ではなく頂けるなんて、夢のようなホワイト企業だ。
「じゃ、早く下着姿になってちょうだい」
「え」
「採寸するんだから当たり前でしょう」