ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「さっきよりも幼くなったけれど、こっちのほうがだいぶマシじゃない」

 すっかりナチュラルメイク姿になった私に、クラレットは安堵の息を吐いた。

「あなたの服装は目立つから、とりあえず私の外套をはおってちょうだい。サイズは大きいと思うけれど、足元まで隠れてちょうどいいでしょ」

 そう言って、マントのようなものを渡される。きれいなえんじ色で、赤ずきんちゃんみたいだ。はおると膝下まですっぽり包んでくれる。

「かわいい。手触りもいいし」

「まあまあ似合うじゃない。それもアッシュが作ったのよ。まだ季節的に暑いかもしれないけれど、我慢してちょうだいね」

 この世界も初秋で、もとの世界と変わらないようだ。湿度が低いせいか、少し肌寒く感じるくらいだ。

「まずは生地屋に行くわよ。エリザベス様が選らんだ生地を多めに注文しておかないと。それから靴とアクセサリーの下見。アッシュがデザインのコンセプトを教えてくれたから、それに合うものをいくつか選んでおくわよ」

 帽子と手袋を身に付けてお店の外に出たクラレットに続く。

「アクセサリーや靴も、仕立て屋のほうで決めるの?」

「そうよ。髪形やお化粧だってアドバイスするわよ。頭からつま先まで、その人が輝く一番の方法を探すのが私の仕事」

「すごいね……」

 トータルコーディネートとプロデュースも兼ねているのか。そんなお店はもとの世界では結婚式場くらいでしか見なかったし、令嬢たちが夢中になるのも分かる。

「さあ、ついてらっしゃい」

 さっさと歩き出すクラレットのあとを、あわてて追った。
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