ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「白い羽飾り……」

「あ、こっちでは、羽ってあまり使わない?」

「帽子に羽飾りをつけることはあるけれど、アクセサリーにはないわね。……でもそれ、面白そうね」

 クラレットが乗ってくれたので、そのアクセサリーを第一候補にして、アレンジを加えることも提案することになった。

「ありがと。あなたのおかげでイメージがまとまったわ」

 帰る道すがら、クラレットにお礼を言われた。口調はそっけなかったし、顔は拗ねたように前を向いていたが、少しは認めてくれたのだろうか。

「こちらこそありがとう。私、クラレットのことけっこう好きだよ」

 嬉しくなって伝えると、クラレットがぎょっとした顔で振り返った。

「あなた……。そういうのやめたほうがいいわよ」

「え、他の人から見たら女同士なんだからいいじゃない。こっちの世界では駄目なの?」

「そうじゃなくて。……これはアッシュが苦労しそうだわ」

 クラレットは、ため息をついて額を押さえている。なぜアッシュが苦労するのだろう。

「どういう意味?」

「こっちのことよ。あなたには淑女のマナーも教え込まないとね」

 にやりと笑ったクラレットは、生徒をいたぶる女教師のような顔をしていた。


 お店に戻るころには、街はオレンジ色の光に沈んでいた。石畳の道も、石造りの白い建物も、恋したように頬を染めている。お城のむこうに沈む夕陽は幻想的で、異世界に来た心細さも浄化されてしまいそうだ。

「きれい……。なんだか、旅行に来ているみたいな気分になっちゃう」

「一年なんだし、長期の旅行だと思っておけばいいじゃない。そのくらい軽く考えていたほうが楽よ」

「うん、本当にそうだね」

 海外旅行なんてしたことがなかったし、ワーキングホリデーのつもりで一年間楽しもう。そのくらいの気持ちでいないと、ここではやっていけない気がする。
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