ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「ウォルさま。生地のことはいいんですか?」
今までじっとしていたアッシュが、私とウォルの間に入るように進み出た。
「ああ、そうだった。ケイト、この真紅の生地でドレスを作ろうと思うんだけど、君はどう思う?」
顔をぱたぱたと手であおいでから、ウォルの示す生地を手に取る。アッシュが壁になってくれているのがありがたい。ひんやりしたオーラのおかげで顔の熱がさめてきた。
「素敵ですね。光沢があって、でも軽くて……。フロッキープリントを裾に入れたら映えそう」
「フロッキープリント? なんだいそれは」
「ええと……、むこうの世界にあった技術なんですけど、毛足の長い生地を植毛して模様を作るんです。そうすると、ふつうのプリントと違って立体的な模様ができるんです。もこもこした影絵みたいな」
「へえ……」
必死に言葉を選んで説明すると、ウォルが感心したように息を漏らした。
「ベルベッドみたいな手触りになるので、この生地みたいな重厚感がある素材に合うんですよ。もとの世界でも秋冬に人気でした」
「アッシュ、今ケイトが言ったようなこと、できる?」
すっと、ウォルの瞳が細くなる。笑顔は崩していないが、アッシュを試しているみたいだった。
「熱を加えて転写するやり方だったら、できると思います。裏に糊を塗った布地を使って、先に模様をくり抜いておきます。アイロンで熱を加えることによって布地に定着させれば、ケイトが言ったような立体的な影絵の模様にすることができると思います」
「さすがだね。さっきの話だけでそこまで考えつくなんて」
アッシュが語ったのは、転写フロッキーと呼ばれるやり方に近かった。フェルトのアイロンプリントのようなものだと思えばわかりやすい。
フロッキープリントのことなんてなにも知らないアッシュが、一瞬でそんな方法を思いつくなんて、やはり彼は天才なのだろう。
今までじっとしていたアッシュが、私とウォルの間に入るように進み出た。
「ああ、そうだった。ケイト、この真紅の生地でドレスを作ろうと思うんだけど、君はどう思う?」
顔をぱたぱたと手であおいでから、ウォルの示す生地を手に取る。アッシュが壁になってくれているのがありがたい。ひんやりしたオーラのおかげで顔の熱がさめてきた。
「素敵ですね。光沢があって、でも軽くて……。フロッキープリントを裾に入れたら映えそう」
「フロッキープリント? なんだいそれは」
「ええと……、むこうの世界にあった技術なんですけど、毛足の長い生地を植毛して模様を作るんです。そうすると、ふつうのプリントと違って立体的な模様ができるんです。もこもこした影絵みたいな」
「へえ……」
必死に言葉を選んで説明すると、ウォルが感心したように息を漏らした。
「ベルベッドみたいな手触りになるので、この生地みたいな重厚感がある素材に合うんですよ。もとの世界でも秋冬に人気でした」
「アッシュ、今ケイトが言ったようなこと、できる?」
すっと、ウォルの瞳が細くなる。笑顔は崩していないが、アッシュを試しているみたいだった。
「熱を加えて転写するやり方だったら、できると思います。裏に糊を塗った布地を使って、先に模様をくり抜いておきます。アイロンで熱を加えることによって布地に定着させれば、ケイトが言ったような立体的な影絵の模様にすることができると思います」
「さすがだね。さっきの話だけでそこまで考えつくなんて」
アッシュが語ったのは、転写フロッキーと呼ばれるやり方に近かった。フェルトのアイロンプリントのようなものだと思えばわかりやすい。
フロッキープリントのことなんてなにも知らないアッシュが、一瞬でそんな方法を思いつくなんて、やはり彼は天才なのだろう。