ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「それをやってくれる? お金に糸目はつけないし、時間はかかってもいいよ。新しい技術はこの店にも必要だろう?」
「ありがとうございます。ぜひ、やらせていただきます」
深々とお辞儀するアッシュを、ウォルは含みのある笑顔で見つめていた。穏やかで紳士的な印象だが、それだけじゃない気がする。
「また来るよ。今日は急に来てすまなかったね」
「ウォルさま、一人でお帰りになるのは――」
扉に向かうウォルをクラレットが制する。
「大丈夫、近くに使いの者を待たせているから。じゃあね。ケイトも、また」
アッシュが扉を開けたあと、三人でお辞儀をして見送る。ウォルの姿を認めたかのように従者らしき人が何人も近寄ってきて、そのまま通りに消えてしまった。
ぽうっとしたままお店の中に戻ると、クラレットが緊張を解いたように息を吐きだした。アッシュも胸元をゆるめている。
「ウォルさまって、すごくえらい貴族だったりする……?」
このふたりの様子といい、さっきの従者といい、エリザベスさまのような貴族とは違う雰囲気だ。
「まあ、そんな感じね……。本当はふらふら市井しせいに出て来られるような人じゃないんだけど、あの人はこれが趣味みたいなものだから」
ふうっと長いため息をついたあと、アッシュは前髪をかきあげた。その仕草に見惚れていたら、アッシュがこちらを見た。見惚れていたのがバレてしまう、と思ってあわてて目を逸らしたのだが、アッシュはじっと私を見つめたままだ。
「ありがとうございます。ぜひ、やらせていただきます」
深々とお辞儀するアッシュを、ウォルは含みのある笑顔で見つめていた。穏やかで紳士的な印象だが、それだけじゃない気がする。
「また来るよ。今日は急に来てすまなかったね」
「ウォルさま、一人でお帰りになるのは――」
扉に向かうウォルをクラレットが制する。
「大丈夫、近くに使いの者を待たせているから。じゃあね。ケイトも、また」
アッシュが扉を開けたあと、三人でお辞儀をして見送る。ウォルの姿を認めたかのように従者らしき人が何人も近寄ってきて、そのまま通りに消えてしまった。
ぽうっとしたままお店の中に戻ると、クラレットが緊張を解いたように息を吐きだした。アッシュも胸元をゆるめている。
「ウォルさまって、すごくえらい貴族だったりする……?」
このふたりの様子といい、さっきの従者といい、エリザベスさまのような貴族とは違う雰囲気だ。
「まあ、そんな感じね……。本当はふらふら市井しせいに出て来られるような人じゃないんだけど、あの人はこれが趣味みたいなものだから」
ふうっと長いため息をついたあと、アッシュは前髪をかきあげた。その仕草に見惚れていたら、アッシュがこちらを見た。見惚れていたのがバレてしまう、と思ってあわてて目を逸らしたのだが、アッシュはじっと私を見つめたままだ。