ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「エリザベス令嬢家の晩餐会? 来週?」
クラレットの話を聞いたアッシュは、片眉をぴくりと吊り上げた。
「ええ。四人でぜひ来てくれって」
「駄目だ。俺は行けない。同じ日にお客さまから夕食に誘われている」
「僕も一緒に誘われているんだよね……。ごめんね」
作業の邪魔になるからあまり入るな、と言われている作業場では、アッシュが縫い物をし、セピアが型紙を作っていた。貴重な機会なので無駄にきょろきょろしてしまう。大きな作業台とたくさんの道具たちがひしめきあう小部屋。想像していたよりもずっとにぎやか。
「そう……。なら、せっかくだけど断るしかないわね」
クラレットはほうっとため息をついた。私も少し残念な気持ちだ。晩餐会に行くなんて、もとの世界に戻ったら絶対にないだろうし。
「何も断らなくても、クラレットとケイトだけで行けばいいじゃない」
「無理よ。貴族の晩餐会なんて、男女ペアで参加するのが暗黙の了解でしょう。エスコートもなしに私たちだけでなんて……」
そうなのか。恋人がいない人に喧嘩を売っているような制度だなあとむっとしたが、私たちが招待されているということは恋人同士でなくとも問題がないのか。
「だからさあ、男女ペアだったらいいわけでしょ」
セピアが人差し指を振ってにっこり微笑んだ。クラレットが怪訝な顔で聞き返す。
「どういう意味?」
「俺のタキシードを貸してやる」
「ちょっと待って、それって」
「クラレットが男の恰好をしていけばいいだろう。男女ペアで何の問題もない」
今にも悲鳴をあげそうなクラレットに、アッシュはにべもなく言い放った。
クラレットの話を聞いたアッシュは、片眉をぴくりと吊り上げた。
「ええ。四人でぜひ来てくれって」
「駄目だ。俺は行けない。同じ日にお客さまから夕食に誘われている」
「僕も一緒に誘われているんだよね……。ごめんね」
作業の邪魔になるからあまり入るな、と言われている作業場では、アッシュが縫い物をし、セピアが型紙を作っていた。貴重な機会なので無駄にきょろきょろしてしまう。大きな作業台とたくさんの道具たちがひしめきあう小部屋。想像していたよりもずっとにぎやか。
「そう……。なら、せっかくだけど断るしかないわね」
クラレットはほうっとため息をついた。私も少し残念な気持ちだ。晩餐会に行くなんて、もとの世界に戻ったら絶対にないだろうし。
「何も断らなくても、クラレットとケイトだけで行けばいいじゃない」
「無理よ。貴族の晩餐会なんて、男女ペアで参加するのが暗黙の了解でしょう。エスコートもなしに私たちだけでなんて……」
そうなのか。恋人がいない人に喧嘩を売っているような制度だなあとむっとしたが、私たちが招待されているということは恋人同士でなくとも問題がないのか。
「だからさあ、男女ペアだったらいいわけでしょ」
セピアが人差し指を振ってにっこり微笑んだ。クラレットが怪訝な顔で聞き返す。
「どういう意味?」
「俺のタキシードを貸してやる」
「ちょっと待って、それって」
「クラレットが男の恰好をしていけばいいだろう。男女ペアで何の問題もない」
今にも悲鳴をあげそうなクラレットに、アッシュはにべもなく言い放った。