ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
オレンジ色に染まった石畳の上を、がたんごとんと馬車が走る。ふかふかの椅子に座っていても、お尻が痛くなりそう。さっきまで夢見心地だったのに一気に現実に戻されてしまった。
「ねえ、クラレット……。お屋敷まで、馬車でどれくらいかかるの?」
「そうねえ。さっき夕陽が落ち始めたから、暗くなるまでには着くわよ」
それってだいぶ先なのでは、と身体をもぞもぞさせると、クラレットがおかしそうに微笑んだ。
「だいぶつらそうね」
「仕方ないじゃない、向こうには馬車なんてなかったんだし……」
「だったら、私の膝の上に乗りなさいよ」
向かいに座ったクラレットが、トラウザーズに包まれた脚をぽんと叩く。
「ちょっと、その恰好でそういう冗談やめてよ」
「うぶねえ。こんなときくらいあなたをからかって遊びたかったんだけど」
「ただでさえ緊張しているのに……」
「はいはい。つまらないわあ」
クラレットはため息をついて押し黙り、馬車から外を眺める。さらさらした金髪が顔にかかって、夕陽を受けて輝いている。こうして見ると、アッシュに顔の造りは似ているんだなと思う。女装のときは三人まったく似ていないと思ったけれど、やっぱり兄弟だ。
「なあに、じっと見て。そんなにこの姿が好みだった?」
「違うからっ!」
神妙にしていたと思うと、私をからかってにやりと笑う。しばらく馬車の中でふたりきりだなんて、心臓に悪すぎる。
この男性はクラレット、この男性はクラレット……と念じるのに夢中になっていると、お尻の痛みはいつの間にか消えていた。
「ねえ、クラレット……。お屋敷まで、馬車でどれくらいかかるの?」
「そうねえ。さっき夕陽が落ち始めたから、暗くなるまでには着くわよ」
それってだいぶ先なのでは、と身体をもぞもぞさせると、クラレットがおかしそうに微笑んだ。
「だいぶつらそうね」
「仕方ないじゃない、向こうには馬車なんてなかったんだし……」
「だったら、私の膝の上に乗りなさいよ」
向かいに座ったクラレットが、トラウザーズに包まれた脚をぽんと叩く。
「ちょっと、その恰好でそういう冗談やめてよ」
「うぶねえ。こんなときくらいあなたをからかって遊びたかったんだけど」
「ただでさえ緊張しているのに……」
「はいはい。つまらないわあ」
クラレットはため息をついて押し黙り、馬車から外を眺める。さらさらした金髪が顔にかかって、夕陽を受けて輝いている。こうして見ると、アッシュに顔の造りは似ているんだなと思う。女装のときは三人まったく似ていないと思ったけれど、やっぱり兄弟だ。
「なあに、じっと見て。そんなにこの姿が好みだった?」
「違うからっ!」
神妙にしていたと思うと、私をからかってにやりと笑う。しばらく馬車の中でふたりきりだなんて、心臓に悪すぎる。
この男性はクラレット、この男性はクラレット……と念じるのに夢中になっていると、お尻の痛みはいつの間にか消えていた。