ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「クラレット、ケイト! いらっしゃい。来てくれてありがとう」
屋敷につくと、満面の笑みのエリザベスさまが出迎えてくれた。たくさんの人でざわめく中、『明るい湖畔』をまとったエリザベスさまはひときわ輝いていた。ひいき目を抜きにしても、招待客がみなドレスに釘付けになっているのがわかる。
「お招きいただきありがとうございます」
優雅に挨拶するクラレットをよそに、私はすでに体力を使い切ってしまった気分だ。
「男性の姿で来るとは聞いていたけれど、一瞬分からなかったわ。どちらの恰好をしても美しいのね」
クラレットの男装をしげしげと眺めたエリザベスさまが、ほうっと感嘆の息をつく。
「光栄です」
「ケイトも今日は一段と綺麗よ。堅苦しくない会だから、楽しんでいってね」
「はい。ありがとうございます」
周りを見やると、長身の年配男性と小柄で優しそうな男性が近くで雑談をしていた。雰囲気から察するに、このふたりがきっとエリザベスさまの父親と婚約者だろう。
「お父さま。アーサーさま。こちらが仕立て屋スティルハートのクラレットさんとケイトさんです」
エリザベスさまが声をかけると、ふたりが振り向いた。
「エリザベスから話はよく聞いているよ。とても優秀な売り子がいると。ケイトさんにドレスの色を決めてもらったと嬉しそうにしていたよ」
グレーの髪をオールバックにしたダンディな男性が、ひげを撫でながら握手を求めてくる。エリザベスさまの父親らしい、穏やかな雰囲気の人だった。
「ひと目見ただけで、その人に似合う色が分かるそうですね。すごいなあ。今度僕のスーツの色もぜひ見立ててくださいよ」
婚約者だという男性は終始にこにこ微笑んでいたが、瞳の奥がエネルギッシュだった。控えめなエリザベスさまとはいい組み合わせなのかもしれない。
「いや、そんな……。すごいのは三兄弟のみんななので、私は何も……」
ふたりが口ぐちに褒めそやしてくれるが、どう答えればいいのか困ってしまう。まだクラレットにフォローしてもらってばかりの新人だし、ドレスの美しさに私の力は何も関係ない。
ぎこちなく会話を続ける私を、クラレットが笑顔を消して見つめていた。
屋敷につくと、満面の笑みのエリザベスさまが出迎えてくれた。たくさんの人でざわめく中、『明るい湖畔』をまとったエリザベスさまはひときわ輝いていた。ひいき目を抜きにしても、招待客がみなドレスに釘付けになっているのがわかる。
「お招きいただきありがとうございます」
優雅に挨拶するクラレットをよそに、私はすでに体力を使い切ってしまった気分だ。
「男性の姿で来るとは聞いていたけれど、一瞬分からなかったわ。どちらの恰好をしても美しいのね」
クラレットの男装をしげしげと眺めたエリザベスさまが、ほうっと感嘆の息をつく。
「光栄です」
「ケイトも今日は一段と綺麗よ。堅苦しくない会だから、楽しんでいってね」
「はい。ありがとうございます」
周りを見やると、長身の年配男性と小柄で優しそうな男性が近くで雑談をしていた。雰囲気から察するに、このふたりがきっとエリザベスさまの父親と婚約者だろう。
「お父さま。アーサーさま。こちらが仕立て屋スティルハートのクラレットさんとケイトさんです」
エリザベスさまが声をかけると、ふたりが振り向いた。
「エリザベスから話はよく聞いているよ。とても優秀な売り子がいると。ケイトさんにドレスの色を決めてもらったと嬉しそうにしていたよ」
グレーの髪をオールバックにしたダンディな男性が、ひげを撫でながら握手を求めてくる。エリザベスさまの父親らしい、穏やかな雰囲気の人だった。
「ひと目見ただけで、その人に似合う色が分かるそうですね。すごいなあ。今度僕のスーツの色もぜひ見立ててくださいよ」
婚約者だという男性は終始にこにこ微笑んでいたが、瞳の奥がエネルギッシュだった。控えめなエリザベスさまとはいい組み合わせなのかもしれない。
「いや、そんな……。すごいのは三兄弟のみんななので、私は何も……」
ふたりが口ぐちに褒めそやしてくれるが、どう答えればいいのか困ってしまう。まだクラレットにフォローしてもらってばかりの新人だし、ドレスの美しさに私の力は何も関係ない。
ぎこちなく会話を続ける私を、クラレットが笑顔を消して見つめていた。