ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「それであの、私に相談って……」

 向き合ってソファに座り、ドキドキしながら切り出すと、ウォルさまが苦笑するように微笑んだ。

「個人的な相談だから、そんなに緊張しないで。……私はそんなに怖い?」

「そんなこと、ないです。むしろとてもお優しいです……」

 お客さまなのに変な気を遣わせてしまったことを、後悔する。私が彼の雰囲気とか、威厳みたいなものに勝手に気圧されているだけなのだ。きっとそれは貴族だからだと思うし、ウォルは何も悪いことをしていないのに。

「そう、それなら良かった。ケイトには嫌われたくなかったから」

「嫌うなんて、そんなこと」

 思わず立ち上がろうとする私を、ウォルは「いいんだ」と手で制した。

「私には敵が多いから、誰に嫌われようとふだんは気にしないんだけどね。ケイトに対してはそうじゃないみたいだ。これでも、君のことを気に入っているんだよ」

「それは……、光栄です。ありがとうございます」

 自分のことを褒められても、謙遜しないで微笑んでお礼を言うこと。クラレットに教えてもらった大事なことは、ちゃんと守れただろうか。どうして私を気に入ってくれるのだろう、という気持ちは残ったままだけど。

「君は異世界人だからかな、私の周りの女性とは反応が違っていてね」

 ウォルの言葉にびくっとして、頭を下げた。

「あの、今までにも失礼があったら申し訳ありません」

「いや、君はそのままでいいんだ。あまり気を負わずに、普通に接してくれるかな。できれば、他のお客さんと同じように」

 真摯に頼むウォルを見て、「ああ、そうか」と気付いた。彼は貴族の中でも立ち位置が違うようだから、今まで気さくに話せる人がいなくてさびしかったのかもしれない。私を気に入ってくれたのも、貴族のような振る舞いができないから新鮮だったのかも。

「そういうことなら……、わかりました」

「ありがとう」

 頷くと、ウォルはやっとほっとしたように姿勢を崩した。
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