ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
 私たちの間の空気がなごんだタイミングで、クラレットがお茶を運んでくる。クラレットは間の取り方がとてもうまい。オネエの勘というものだろうか。

「ウォルさま、お茶をどうぞ。相談のほうは進みましたか?」

 カップを私とウォルの前に置きながら、さりげなく尋ねる。ちらちらと目配せを送ってくるのは、粗相がないか心配してくれているのだろう。

 大丈夫、という意味をこめて頷いたら、呆れた顔でため息をつかれた。なぜなのか。

「そうそう、相談だったね。実は新年の贈り物について、身内の女性から無理難題を出されているんだよ」

「無理難題……ですか?」

「ああ。ケイトならいいアイディアを思いつくのではないかと思って」

 フロッキープリントの話をした出会いから、ウォルは私を買いかぶりすぎている。でも、期待されるのは店員として素直に嬉しい。

「面白そうですわね。お客さまもいらっしゃらないし、私も同席させてもらってもいいですか?」 

「ああ、もちろん」

 クラレットが空いているソファに座る。持ってきたカップが三つあったので、最初からそうするつもりだったのだろう。ウォルは、改めて私たちに向かって話し出す。
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