夢の薬
おいおい、本当に暗い話になって来たぞ。僕は戸惑いと困惑の表情を隠せなかったが・・・逆に考えてみよう。
奴は辛い闘病生活を送ってきて、溜まり溜まったものがあるに違いない。辛くて辛くて、誰でもいいから愚痴のようなもの吐き出したかったのかもしれない。親も遺伝で病気を経験しているから、自分の辛さまで背負わせたくなかった・・・とか。
僕は深く考え、奴に対して優しく接する事に決めた。うん、そうだ。僕も病気だったのなら、その大変さを聞いて欲しい。
「親御さんは?」
「死にました。環境も悪かったですから。」
すみません、と僕は謝る。
環境って・・・何が悪かったのだろう。空気?いやいや、ものすごい貧困で、薬を買う金も無かったのだろう。
「心中お察しします。僕もあまり、仕事がうまくいかなくて。」
「そうですか。私の親も、事業に失敗しましてね・・・。病気もあり・・・自殺したんですよ。何年も前の話です。」
環境も悪く、事業も失敗、そして病気。そりゃあ死にたくもなる、なんて思ったが、流石に失礼だと感じて、心の中で詫びた。
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