夢の薬
あたりはもう、闇に飲み込まれていた。奴の顔ももうよく見えない。暗くなる話に、暗くなる周り。僕はバスをただ待っていた筈なのに。
・・・環境が悪かったと奴は繰り返していたが、事業を開くぐらい親だったのだから・・・。金に困っていたとは思えない(失敗した時を除いて考えると)。貧困、という環境では無さそうだ。・・・突っ込んでみるか。
「環境が悪いと仰ってましたが・・・住んでる場所が、何かあったのですか?」
「・・・ええ。まあ。」
奴は何か躊躇っているようにも見えた。地雷だったのだろうか。
「私の住んでいた場所がですね・・・いや・・・全体、全部というか・・・。」
「全体?」
「はい。・・・地球・・・全体が・・・。」
何を言っているのだろう、この男は。地球全体の環境が悪いっていうのか?まあこの世の中、汚染がひどい所はたくさんある。だがまだ、いい場所だってあるのだ。
「どこに住んでらしたのです?」
「・・・。」
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