ひとみ
冷めたコーヒー、温かい手
あたしは、高級マンションの最上階のテラスで、夜風を楽しむという、リッチを味わっていた。
広いその空間に置かれたベンチにあたしは座り、くつろいでいた。
すると、いくら春とはいえまだ肌寒いので、隼人くんは温かいコーヒーとタオルケットを持ってきてくれた。
『ありがとう』とあたしが微笑むのをみると、隼人くんは瞼を閉じてあたしの手をとった。
「なっちゃんには、元気でいてほしいから。」
そう言った彼はきっと、先程の出来事を気にしていたのだろう。
左手はコーヒーで温かいのに、右手はあなたの手のせいで冷え切っていた。
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