【番外編 完】愛を知らない彼
神谷さんをリビングのソファーへ促し、コーヒーをいれた。

「もう少し時間がかかるので、待っていてくださいね」

「千花さんも仕事で疲れているのに、なんだかすみません」

「いいえ。私からお誘いしたんですし。もともと自分の分を作る気でいたので、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。それにしても、女性らしい、可愛らしいお部屋ですね」

「狭くてすみません。掃除が行き届いていないので、あまり見ないでくださいね。あっ、テレビでもつけますね」

神谷さんを待たせても悪いので、手早く料理をしていく。
ふと顔を上げると、神谷さんと目が合う。

「千花さん、手際がいいんですね」

「そんなことないですよ。うちは両親が共働きだったので、家のことを手伝ったり、弟の世話をしたりしていて慣れてるんです。さあ、もうあとは並べるだけなので、こちらのテーブルに来てください」
< 23 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop