【番外編 完】愛を知らない彼
「か、神谷さん……?」

「千花さん、少しだけ僕の話を聞いてくれませんか?」

「は、はい」

促されるまま席に戻ると、神谷さんが真剣な表情のまま話し出した。

「僕の両親は、僕が物心つく前から不仲でした。顔を合わせればいがみ合い、それを僕に隠すこともなかった。僕に愛情を向けることもなかった。僕は家政婦さんに育てられたようなものです。世間体を気にして、どんなにいがみ合っていても離婚しない両親を見ていると、好きとか愛情とか信じられずに生きてきました。
これまで、告白をされて数人の女性とお付き合いすることもありました。でも、最後はいつも〝あなたの気持ちがわからない〟と、別れを切り出されていました。
でも、千花さんに会って、話して、こうして一緒に過ごしていると、どんどん千花さんに惹かれていくんです。自分から人を好きになるなんて、初めてなんです。
千花さん、あなたの事が好きです。僕とお付き合いしてもらえませんか?」
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