【番外編 完】愛を知らない彼
康介さんと出会ったのが、夏の終わり頃。
それから一緒の時を過ごし、11月を迎えていた。
11月11日は、私の誕生日。
康介さんはお祝いに、いつもよりちょっと高級なレストランに連れて行ってくれるという。
当日、いつもより少しかしこまった紺のワンピースを着た。
鏡の前を行ったり来たりしながら、康介さんのお迎えを待っていた。
ピンポーン
「はーい」
ドアを開けると、少し光沢のあるスーツを着た康介さんがいた。
「千花……いつも可愛いけど、今日は一段と素敵だね」
ストレートな言葉に、頬が真っ赤になるのが自分でもわかった。
「ありがとう。康介さんもとっても素敵」
「ありがとう。千花、お誕生日おめでとう。さあ行こうか」