【番外編 完】愛を知らない彼
「康介のことで話があってきました。森沢千花さん」

「えっ……」

なんで私の名前を知ってるの?
それに〝康介〟って、いかにも親しげだ。

「よろしければ、少し話がしたいのですが」

さすがに家主の許可もなく家に上げることはできないので、近くの喫茶店で話をすることにして、園田さんには先に行って待ってもらった。

急いで着替えを済ませて、園田さんの元へ向かった。


「お待たせしました」

「いいえ、こちらが急に伺ったので。コーヒーでいいてすか?」

「はい」

注文を済ませると、彼女は早速話し始めた。

「単刀直入に言います。康介と別れてください」

「えっ?どういうことですか?」

「私は、康介と同じ職場で働いていて、彼とは婚約しています」

そう話す園田さんの左指には、ダイヤの輝く指輪がはめられていた。
< 50 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop