【番外編 完】愛を知らない彼
「ここ数ヶ月、康介の様子が変わったので疑っていたのですが……やっぱり浮気をしていたようですね」

「う、浮気って、そんな。康介さんは私と結婚しようって言ってくれてます。浮気だなんて……」

「人の婚約者を奪おうとしておいて、まだそんなことを言いますか？」

わずかに園田さんの口調がきつくなり、思わずビクリとしてしまった。

「康介と私は、職場で出会って付き合うようになりました。彼の複雑な生い立ちから、私には結婚したら家庭に入って支えて欲しいと言われています」

運ばれてきたコーヒーに口をつけると、園田さんは続けた。

「康介は親の愛情を知りません。見たところ……あなたの仕事は残業もあまりなく、家事も得意そうで……康介はあなたに母性を求めたのでしょうね。私は、結婚までは仕事を続けるので、婚約者として今はまだあなたのように、康介の生活の手助けをしてあげられる時間は多くありません。あなたはその穴埋めなんでしょうね」

そう言って、彼女はまるで私に同情するかのようにクスッと笑った。
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