【番外編 完】愛を知らない彼
泣きながら必死に走っていると、後ろから腕を掴まれた。

「千花、待って」

「いやっ、離して」

「離すわけないだろ！今この手を離したら、千花は誤解したまま僕から離れていってしまうだろ」

私の目からは次々と涙が溢れて、顔を上げることもできなかった。

「やめて。園田さんは、康介さんの本当の婚約者なんでしょ？」

「千花、なんのことだ？」

不意に康介さんの声のトーが和らぎ、戸惑いが伝わってきた。

「園田さんに聞いたの。本当の婚約者は園田さんだって」

「何を言ってるんだ？千花、園田さんに会ったことがあるの？なんで園田さんが僕の婚約者なんて話になってるんだ」

「そんなの、康介さん自身がわかってるんじゃないの？」

「千花、何か行き違いがあるようだから、落ち着いて話をしよう」

康介さんが真剣な目で必死に訴えかけてきた。
嘘を言っているようには見えない。
少しずつ落ち着いてきた私を見て、康介さんは私を近くの公園のベンチに促した。
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