【番外編 完】愛を知らない彼
「……気持ちのないまま付き合っていたなんて、最低だよな……」
そう呟く彼の寂しそうな目に切なくなった。
その目に、彼の孤独だった過去を感じた。
「……そんなことない。康介さんは悪くない。疑ってごめんなさい」
「千花、僕は君を愛している。僕が君に求めているのは母性なんかじゃない。愛しい君に、ただいつまでも笑顔で僕の横にいて欲しいだけなんだ。人を愛することができなかった僕に、初めて愛することを教えてくれたのが千花なんだ。君が見せる笑顔はいつも愛情が溢れていて、そこに僕は救われたんだ。千花、もう一度言う。僕と結婚して、一生隣にいてくれないか?」
「はい」
それだけ言うのが精一杯だった。
私の目からは涙が溢れるばかりだった。
そんな私を、康介さんが力強く抱きしめてくれた。
「千花、2人の部屋に帰ろう」
「うん」