【番外編 完】愛を知らない彼
「いつも通りだよ。あっ、お昼に部下とランチに行ったんだけど、その時に教えてもらったお店がすごく良かったから、今度は千花と行きたいね」

「本当?楽しみにしているね!」

食事をしながら、今日一日のことを話していた。



「千花、ゆっくり散歩しながら帰ろうか」

そう言うと、康介さんは手を繋いでくれた。
でも、その繋いだ手の暖かさとは裏腹に、康介さんは一言も話さなくなった。

「康介さん、やっぱりどうかしたの?」

そう言って、康介さんの顔を覗こうとすると、いきなり力強く抱きしめられた。

「康介さん、いきなりどうしたの?」



「千花……さっきの男は誰?」

「えっ?さっきのって?」

「さっき、迎えに言った時、園の駐車場で話していた人だ」

「……卓弘さんのこと?」

「卓弘さん?」

そう呟くと、康介さんは手を離して私の目を切なそうに見つめてきた。
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