【番外編 完】愛を知らない彼
「名前で呼ぶような仲なんだな」

「ちょっ、康介さん待って。勘違いしないで。卓弘さんとは何でもないから」

「それにしては親しげに話していたよね」

「それはその……」

一瞬言葉を濁した私に、康介さんの表情が曇った。

「いつからなんだ」

「えっ?」

「彼といつから付き合ってるんだ?言わなかったけど、前にもあの男と親しげに話しているのを見たことがあるんだ」

「そんなわけないでしょ。違うの。ちゃんと話すから」



「康介さん、まず勘違いさせちゃってごめんなさい。卓弘さんは……私が大学生の頃付き合っていたの。数ヶ月前から仕事で園に来るようになったの。それで懐かしくて話してただけなのよ。今は、私が結婚して幸せなのを喜んでくれてるし、彼自身も結婚を前提に付き合っている人がいるんだって。本当にやましいことは何もないの」





「康介さん?」


「……ごめん千花。自分がこんなに嫉妬深い男だったなんて思わなかった。あの男と千花が親しげに話しているのを見て、どうしようもないぐらい嫉妬したし、不安になった」

「康介さん……」

「千花が僕以外の男と親しげに話してたのが嫌だった。僕だけを見ていて欲しいと思ってしまう」

「康介さん、それは私も同じだよ。園田さんのこともあるし、他にも職場に綺麗な女性がたくさんいるだろうし、私だっていつも嫉妬してるよ。でも、康介さんを信じているから」

「……千花の方が、僕よりもずっと強いんだな」

そう言って、康介さんは少し恥ずかしそうに笑った。
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