シックザール
支度を終えた頃、あたしの家の呼び鈴が鳴る。特殊警察官は、あたしの住所を知っている。誰かが来たのだ。

「はい」

あたしがドアを開けると、「迎えに来たよ」と微笑むハルトさんがいた。

白いシャツの上にグレーのカーディガンを羽織り、黒いズボンを履いている。捜査官の私服姿など、初めて見た。

「ジーナ、その服よく似合ってるね」

ハルトさんはそう言い、あたしの手を引く。

「えっ?」

あたしが首を傾げると、ハルトさんは「行くんでしょ?歓迎会」とあたしに笑いかけた。

本当なら断らなければならない。あたしは、特殊警察の道具として生きなければならないのだから……。同じ捜査官と仲良くなってはならない。それは上司から言われたこと。

それでも、足を止められない自分がいる。つないだ手の温もりが、ミアたちと過ごした日々を思い出してしまう。

人の温もりが優しいと、久しぶりに感じた。あたしを捕らえた警察の手は、驚くほど乱暴だったから……。

ハルトさんに手を掴まれたまま、あたしは歓迎会で貸し切りとなったお店へと入った。
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