【短編】もっと近づきたい。

いい香りするね。



恐れていた日がついに来てしまった。

明日から魔の期末テストだ。

今回赤点取ると本当にヤバい。


さっきも担任の先生に個別に呼ばれて…。


「赤点取ると、どうなるか分かってるよな?」


なかなか威圧的な顔面で脅された。


***


「あー!やっぱムリ!!」


今世紀最大のピンチを迎えている私は、吹奏楽部の部室を借りてテスト勉強中。

今日の部活はお休みだけど、家だと無駄に掃除とかしちゃって勉強できないから…。


「公式?なにこれ、何語?」


何度教科書を読んでも、問題の意味すら分からなくて、全然先に進めない。


「なにしてんの?」


必死に教科書の暗号を読み解いていると、突然、近くで声が聞こえた。

そして、にらめっこしていた教科書を上からほいっと持ってかれる。


あ。


同じ吹奏楽部の由城先輩だ。


「先輩こそ、今日部活休みですよ?」

「ちょっと忘れ物取りに。ななちゃんは何でいるの?」

「えっと、テスト勉強してまして…」


さすがに赤点のことは、恥ずかしくて先輩には言えない。


「ふーん、じゃあ教えてあげよっか?」


え?


みんなの憧れ的存在の…。

いつもキラキラ輝いている…。

あの由城先輩が…?

私に勉強を教えてくれようとしている?!


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