【短編】もっと近づきたい。
「いいです、いいです!先輩も明日テストですよね?先輩に迷惑かけられないです!」
「教えるのも勉強になるから」
丁寧にお断りしたのに、先輩は私の隣に座ってしまった。
先輩って優しいんだなー。
外見にとどまらず中身までかっこいい。
…って、今はそれどころじゃなかった!
勉強、勉強!
私は気を引き締めるために、自分のほっぺたを叩く。
「で、どこが分からないの?」
「ここなんですけど…」
私はそう言って教科書を見せようとすると、先輩は身を乗り出して、机に肘をついた。
…あのですね。
教えて頂けるのはとてもありがたいのですが…。
ちょっと距離が近すぎるような気が…。
由城先輩の腕が私の腕に当たって、ちょっと緊張する。
「あ~、ここはね」
先輩が喋り出したのと同時に、窓から風が入ってきて。
すごくいい香りが漂ってきた。
先輩、超いい匂い。
柔軟剤かな?
シャンプーの匂いかな?
「で、こうなるの。って、ななちゃん聞いてる?」
…え?
先輩の香りに気を取られていて、全然聞いてなかったー!
「こ、こうですよね?」
「全然違うよ」
「はて」
先輩のいい香りに癒されてる場合じゃなかった!
せっかく教えてくれてるんだから集中しなきゃ!