サヨナラのために



「美羽、文化祭一緒に回りたい」


「…ダメ」


私の返事は予想していたんだろう、誠也はふくれっ面で抱きついてくる。


柔らかいその髪を、そっと撫でる。


ごめんね。



こんなことしかしてあげられなくて。


誠也の自由を、奪ってごめん。


携帯が振動して、ディスプレイを見て、慌てる。


「もしもし…」


「神野先輩、すみません突然…シフトの時間なのに岡本先輩がいなくて…もしかしたら一緒かなって」


電話越しに聞こえる、佐々木さんの慌てた声。


なんの疑いもない、純粋な声に、私はぎゅっとスカートの裾を握る。


「…ごめん、一緒じゃないや。見たら言っておくね」


「そうですか…ごめんなさい、お願いします」


電話を切って、誠也の腕をそっと離す。


「聞こえてたでしょ?行って」


「ん…ごめん」


「なんで誠也が謝るの」



間違った関係。


そんな風に、申し訳なさそうな顔させてるのは、私だね。


平気な顔して手を振る。




私、本当に、醜いな。


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