サヨナラのために


「先輩はすごいね」


私には、きっと真似できない。


「そう?…たまに、自分の気持ちが分からなくなるよ。自分が本当は誰が好きなのか、自分の口から出る言葉のどれが本当でどれが嘘なのか」


自分に嘘をつくって、そういうことだよ。



先輩の、落ち着いた声が、耳に残る。


「…やっぱり私、先輩じゃだめだ。私、結構先輩のことスキになっちゃってるもん」


「ええ!俺ら両思い!?」


先輩の声に、私はまた笑う。


孝宏先輩が、大切だ。



でも、それは、誠也とは全然違う。



愛しいけど、愛じゃない。



「…どうして、誠也じゃなきゃダメなんだろう」





あなたを愛するのには、いつだって苦しさが付きまとう。

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