サヨナラのために




言えない。



何も、言えない。



この子の真っ直ぐさの前では、私の汚さが浮き彫りにされる。


早く、取り繕わなきゃ。


早く…



「岡本先輩を、解放してあげてくださいっ…」


佐々木さんの声は、震えていたけど、しっかりとした意志を持っていた。


「分かるんです、見てて。元気に笑っていても、時々、すごく暗い表情になる。岡本先輩をそうさせてるのは、神野先輩ですよね…?」


知らない。


誠也の暗い顔なんて、私、知らない。


「岡本先輩のことが、好きなんです」


真っ直ぐな想い。


誰になんと言われても、曲げない。


そんな、強い意志が、言葉から、全身から、感じる。

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