サヨナラのために
夜中の11時半になって、私は支度を始めた。
部屋着から買ったばかりの白いワンピースに着替えて、音を立てないようにそっと部屋を出る。
冷蔵庫から箱を取り出して、誠也にメッセージを送る。
『今から出るね』
すぐに既読がついて、『りょーかい』と返事が返ってきた。
ブーツを履いて、そっと家から出る。
「美羽」
家の門の前には、誠也が立っていて。
「わざわざ来なくてよかったのに」
慌てて側に行って、頬にそっと触れる。
「冷たい。もしかしてずっといたの?」
「んー、なんか緊張して」
心臓が、ズキリと痛む。
「ほら、いこ」
なんでもない顔をして、私は誠也の背中を押す。
ごめんね、誠也。
自分勝手で、ごめんなさい。