サヨナラのために


誠也の家には、一階の窓からそっと入った。


静かに階段を上がって、誠也の部屋に入る。


電気のついた空間に、、ようやく肩の力が抜けた。


「こういうのもスリルあっていいな」


「ふふ、そーだね」


いつもより小さい声。


チラッと携帯を見ると、11時55分を示していた。


「誠也、後ろ向いて」


「え、なんで」


「いーから」


無理矢理後ろを向かせて、私は持ってきた箱をそっとあける。


慣れない作業に手間取ってしまった。


「誠也、いーよ」


私の声にこちらを向く。


「お誕生日おめでとう、誠也」


蝋燭の刺さったチョコレートケーキ。


二人で食べれるように、小さめの。

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