サヨナラのために
「…これ、美羽が作ったの?」
「そーだよ。だから、あんまり美味しくないかもだけど」
でも、重いくらい想いはたくさん詰めたから。
「ばか、美味しいに決まってるじゃん」
そう言って、誠也はロウソクの火を吹き消す。
「ありがと、美羽」
嬉しそうな誠也の笑顔に、胸が、締め付けられる。
涙が出そうになって、慌てて私は俯く。
「ほら、早く食べよ」
フォークを渡して、誤魔化すように誠也を急かす。
「ん!めっちゃうまい!さすが美羽〜」
「よかったあ」
口の中にふんわり広がる、甘くて濃厚なチョコレートの味。