サヨナラのために


「…み、う」


「せ、いや…」


誠也はちゃんと優しくて、朦朧とする意識の中、彼の顔をしっかりと目で追った。


好き。


大好き。



本当に、大好きなんだよ。


「せ、いや…せい、や」


言えない気持ちの代わりに、何度も名前を呼んだ。


その度に強くなる快感に、悲鳴が出そうになる。


「み、う…顔見せて」


顔を隠していた手を顔の上でしっかりと拘束され、声が止まらない私の唇を誠也のそれが塞いだ。


甘い甘い、キス。


最初で最後の、キス。



嫌だよ。



サヨナラなんて、嫌だよ。



こんなに、好きなのに。



ずっとずっと、好きなのに…




離れなきゃいけないなんて、嫌だよ。


< 119 / 153 >

この作品をシェア

pagetop