サヨナラのために


楽しそうに話す誠也の横顔をそっと盗み見る。


表情も、輪郭も、寝癖も、吐き出される白い息も。


繋ぐ、手の感触も。


全部、1ミリも狂うことなくこの身に刻もう。


そう、強く思いながら。


かけがえのないこの時間を、私の世界からあなたが消えても。


忘れず、鮮明に思い出せるように。




私はギュッと手を握り返した。



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